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「がん公表相次ぐけど…」という記事にカミングアウトの問題を考えました。
著名人らが「がん」を公表する例が相次ぐ。
その姿に励まされる患者がいる。
一方で世間の反応に傷つく人もいる。
2人に1人ががんになる時代。
どう受け止めればいいのか。
生稲晃子さん(女優・乳がん体験者)はこう語る。
2011年乳がんの告知を受けた。
丁度、健康番組に出演していた頃で
「私の病気は番組にそぐわないんじゃないか」と考えた。
しこりは8mmと小さく転移もなかったが、
せっかくレギュラーに起用してもらったのだから、降りざるを得ない状況が来るまでは番組を続けたい。
私は公表しないことを決めました。
がんのことは夫と当時5歳の娘ら限られた人だけに伝え必死で隠しました。
その後に2度再発。右の乳房を全摘した2度目は最悪のことも考える辛い日々でした。
でも一番苦しかったのは病気を隠す精神的な辛さでした。
親しいスタッフにも「元気よ!」と笑わなければならない。
それが罪悪感につながったのです。
それでも公表しなかったのは私への見方が変わり、仕事に影響するのではという「恐怖心」があったからです。
この時期いろいろな番組に呼んでもらえたことは闘病の励みになりました。
心と体はつながっているといいますが、
誰かに必要とされているから生きなければという気持ちは「薬」なると実感しました。
しかし乳房の再建手術の準備をするころ、気持ちが変わってきたといいます。
このころ自分の体験を話すことで、少しでも同じ状況の方の力になれたらと考えるようになってきたといいます。
再建手術と仕事の区切りがついたとき、ついにがんを公表しました。
告知から4年8ヶ月がかかりました。
誰かのためにと思った公表でしたが、実はそれで楽になったのは私自身でした。
「私はがんなんだよ」と正直に話すことで、これまでの人生で隠していた部分も含めてありのままの自分を出せるようになったと語る。
だから体の一部を奪った「がん」は勿論、憎らしいけど、この病気に感謝している部分もあるんです。
治療が進歩してがんは「不治の病」ではなくなりつつあります。
でも社会にはまだ偏見があります。
仕事やキャリアを失うことを恐れ職場に報告できない人はとても多い。
生稲さんも治療に一区切りがつき笑顔で話せるようになった時期に公表したのは正解だったと思う一方で、
もっと早く公表していれば精神的に楽になれたのに、という思いもあるそうです。
だから誰もが「がんになった」「辛い」といえ、治療しながら仕事を続けられる社会的な環境を作っていく必要がある。
その上で、病気についていうかどうかは、自分自身が選択すること。
タイミングは病状や考えが変わっていく中で、自然に見つかっていくと思います。
と結ばれていました。
公表やカミングアウトすることで、傷つくこともあれば、逆に周囲から勇気つけられることもある。
「同じ境遇の悩める人のために自分の体験を役立ててほしい」と考えることも立ち直るきっかけになる。
公表の時期は、早くすれば精神的に楽になるが、遅すぎることもなく、自分がそうしたいと思ったときにすればいい。
生稲さんの体験からそんなことを学ばせてもらいました。
<心療内科医の海原純子先生>
多くの診療経験から、著名人のがんの公表に際して、受け止める側の私たちにも細やかな気遣いが必要と指摘します。
SNS には「がんとの闘いに勝ってください!」「頑張って!」といった励ましの言葉が並びますが、
患者の側にはがんの治療を「勝つ・負ける」で表現されるのはとてもツラく落ち込む方も多い。
有名人のがんの公表を誰もが自分の勇気に変えられるとは限らない。
「あの人はあんなに勇敢にがんに立ち向かっているのに、なぜ私は…」という二重のツラい思いをする人もいる。
みんなががんに敢然と立ち向かえるほど強いわけではないのです。
確かにがんの治療は進歩して完治する人もいる。
でも「勝つ」が完治や寛解を意味するだけなら、治らないがんに苦しむ人は「自分は負けなのか」と思ってしまいます。
患者や家族の方々と話をしていると、がんを公表している人に対する一様ではない感情や、
周囲の激励や応援の言葉に感じる微妙な違和感という本音に触れるときがある。
働きながらがんの治療に専念する人に
「仕事は無理せず治療に専念してください」とよく使う言葉も、
言われた方は気遣いの言葉だと理解できても
「社会から切り離された感じがする」
「元気な人の世界から、がんという特殊な世界へ振り分けられてしまった感じがする」
との思いを抱く人もいる。
またある女性に「がんになって一番嫌だった言葉」を尋ねると、
医師から告知を受けたときの「残念ですが、がんが見つかりました」の「残念ですが」という言葉だと答えました。
「私は残念な人だったのか」とつい自問してしまい、とても重く嫌な言葉だったそうです。
がんになった人には、健康な人には想像できない感じ方や心の動きがあることを痛感したと言います。
がんを公表して誰かを勇気つけたい人も隠したまま治療を続けたい人もいます。
それぞれの選択を、私たちは「勝つ」か「負けるか」「頑張る」か「頑張れない」かといった価値観にとらわれず、
ありのままに受け入れていく必要がある。
と結ばれていました。
同じ言葉でも、その言葉で勇気を持つ人もいれば、傷つく人もいる。
「言葉は薬」薬効も強ければ、副作用も伴います。
言い放しではなく、繰り返しフォローすることが大切だと学びました。
<がん薬物療法専門医の勝俣範之先生>
がんをめぐっては様々な誤解があります。
典型がメディアにおける扱い方です。
相変わらず「がんは怖い病気」と強調した上で、
「早期発見してよかった」「進行ガンで治らず壮絶な死を遂げた」の二分法に押し込んでしまいがちです。
以前、テレビのディレクターに「治ったか、治らなかったかじゃないんだ」「それ以外にもがんとの共存というのがあるんだ」といったら、
「それじゃあ視聴率が取れません」と言われたことがあります。
「治る・治らない」の二分法はとてもわかりやすいのですが
がんの治療が進歩して、その二分法の間にいる人が随分と増えています。
私の診ているステージ4の乳がんの患者さんは、遠隔転移を経て25年間も抗がん剤治療を続け、仕事もしています。
そもそもメディアは「早期発見・早期治療が大事」と言いすぎです。
実際に早期発見・早期治療で治るがんは一部です。
「がんは生活習慣病」とも呼ばれますが、生活習慣で予防できるがんも一部です。
がんには誰にでもなる可能性があり、共存することになる人が多い病気なのです。
メディアにはがんは共存できる病気だと広く伝えるとともに
「共存する人々をどう支えるか」といった問題提起をしてほしいと思います。
またがんと診断されるとその人の元には効果があるかどうかはっきりしない情報などが押し寄せ
高額なサプリメントなど、中には100万円単位のお金を投じる人もいます。
こうしたことに医者が関わっていることも大きな問題です。
日本では、自由診療で医者が何をしても法律違反にならないことも問題です。
有名人のがん公表をセンセーショナルに報じるだけでなく、
正しい情報、認識を伝えることはメディアだけでなく医学界の課題でもあります。
この意見は現場で治療に携わっているドクターの正直な実感だと思います。
良質な記事だと思いましたのでご紹介しました。
最後までお読みくださりありがとうございました。