〒321-0104 栃木県宇都宮市台新田1-2-25 TEL:028-658-6111 0120-4430-92(よしざわ9リ2ック)
朝日新聞に医療の役割と題し、読者から次のような投書がありました。大変貴重なご意見と思いましたので自戒を込めて紹介させて頂きます。医者の対応にとても怒りを感じました。同じような患者を何人も診ているからかとても冷たく、いづれ何もできなくなり家族で面倒が見られなく施設に入れることになると…頑固で態度の悪い父に対して、家族に向かって初対面で放った言葉でした。今、父は多少ボケはありますが、元気にしています。(奈良県・50代女性)<超高齢者には「脱医療化」も考えて>医療者の間で「認知症患者は自分が認知症であることを認識していない」という説があります。それは誤りで傲慢な発想です。それまで当たり前にできていた料理がうまく作れないーなぜ自分がここにいるのかわからないーそんなとき、誰よりも不安や恐怖を感じているのは患者さんご本人です。そしてその辛さは体験している本人しかわからないそのことを理解していない医療者にまともな認知症のケアなどできません。今の抗認知症薬は、脳の機能の一部を一時的に元気にしているに過ぎません。そんな中、医師の重要な役割はご本人の不安と向き合うことです。取り除けなくても不安を分かろうと努力していることを伝える。そのために、家族ではなくご本人に直接、何か困っていることがないかを聞くようにしています。そうして長く付き合ううち、「あの医者と話すと楽になる」と思ってもらえたらいい。50代など、比較的若いうちに発症するタイプに関しては、治療のための研究をさらに進める必要があります。しかし、90歳を越え、認知機能が下がったといっても正常な老化とほとんど変わらない人にも抗認知症薬が処方されていることには疑問を感じます。そんな人には経過を注意しつつ、すぐには薬を出しません。超高齢の方には余計な医療で負担をかけない「脱医療化」も考えるべきです。(都立松沢病院院長・斎藤正彦先生)<薬より「伴走」患者ごとに…>「薬に力で治してほしい」認知症となった人や家族の多くが抱く願いです。しかし、今使われている認知症の薬には効果に限界があります。そんな中、医療に対して何が期待できるのでしょうか。「周囲に言いたいことが言えず、自分を自分で責めてしまって…」「心の不調には気候の急な変化も関係します。あなたが悪いわけではありませんよ」大阪市の認知症専門クリニック・松本診療所の松本一生院長が外来患者にゆったりと話しかけます。1人につき約15分およそ1ヶ月に1度の面接で松本さんが重視するのは、認知症によって低下した機能を診つつ、しっかりと残っているところを見つけて「あなたの本質は変わってません!」というように伝えることだそうです。患者の不安に寄り添うのが目的です。対話を重ねるうち、たとえ時間がかかったとしても気持ちが徐々に落ち着いていくことが多いそうです。こうした「精神療法的面接」ができた人では、「認知機能の低下がしにくい」といいます。一方でなるべく薬には頼りません。たとえ治らなくても、本人が病気と向き合えるよう「伴走」するのが私の役割です、と語っています。<効果は40人に1人>いま、認知症の中で最も多いアルツハイマー病の治療に使われる代表的な薬は、アリセプトなどの「コリンエステラーゼ阻害薬」です。認知機能が落ちるのを抑える目的の薬ですが、複数の研究を解析した結果では平均的な効果は「実感できるほどのものではない」ことが示されています。効くかどうかは個人により差があるものの、「よく効いたと判断できるのは40人に1人くらい。ほとんどの人にとっては意味がありません」と兵庫県立こころの医療センター・小田陽彦センター長はいいます。アリセプトに続いて登場した3つの抗認知症薬は、日本の治験で十分な効果が確認されませんでした。でも「海外では使われ、アリセプトだけでは治療薬の選択肢が限られてしまう」といった理由で承認された経緯があります。これら4種類の抗認知症薬は、今年8月にフランスが公的保険の対象から外しました。副作用がある割に効果が弱いというのがその理由です。<検査せず、安易な処方>抗認知症薬を使うなら、対象のアルツハイマー病などであることを見極めるのが前提になります。ところがそのための事前の検査が十分になされていないという実態も、今年医療経済研究機構などの調査で明らかとなり、「薬が安易に処方されているのではないか」という指摘が出ました。また本来は一緒に使うべきではない同種類の抗認知症薬が、一部で併用されているケースがあることもわかっています。医療の多くは、薬や手術を通して患者の病気を「治す」ことを目的にしています。でも、多くの認知症は今の医療技術では「治癒」させることができません。英国の施設で長く認知症ケアに携わるある精神科医は、「認知症は複雑な病気。レシピに沿って『この診断ならこの薬を出せばいい』というわけにはいかない。本人をよく診て、その人にどんなケアが求められているのか、個人ごとに見つける必要があると話しています。(編集委員・田村建二)朝日新聞 2018.12.9. p9. 医療の役割〜認知症、前を向くために〜
オンライン資格確認を導入しています。 感染対策として栃木県がんセンターとの連携のもと院内トリアージを実施しています。 皆様のご理解とご協力をお願い致します。 ・栃木県立がんセンター乳腺外科 ・独協医大乳腺センター ・自治医大・乳腺科 との乳がん地域連携を実施しております。
朝日新聞に医療の役割と題し、
読者から次のような投書がありました。
大変貴重なご意見と思いましたので
自戒を込めて紹介させて頂きます。
医者の対応にとても怒りを感じました。
同じような患者を何人も診ているからか
とても冷たく、いづれ何もできなくなり
家族で面倒が見られなく施設に入れることになると…
頑固で態度の悪い父に対して、
家族に向かって初対面で放った言葉でした。
今、父は多少ボケはありますが、元気にしています。
(奈良県・50代女性)
<超高齢者には「脱医療化」も考えて>
医療者の間で「認知症患者は自分が認知症であることを認識していない」
という説があります。
それは誤りで傲慢な発想です。
それまで当たり前にできていた料理がうまく作れないー
なぜ自分がここにいるのかわからないー
そんなとき、誰よりも不安や恐怖を感じているのは患者さんご本人です。
そしてその辛さは体験している本人しかわからない
そのことを理解していない医療者にまともな認知症のケアなどできません。
今の抗認知症薬は、脳の機能の一部を一時的に元気にしているに過ぎません。
そんな中、医師の重要な役割はご本人の不安と向き合うことです。
取り除けなくても不安を分かろうと努力していることを伝える。
そのために、家族ではなくご本人に直接、
何か困っていることがないかを聞くようにしています。
そうして長く付き合ううち、
「あの医者と話すと楽になる」と思ってもらえたらいい。
50代など、比較的若いうちに発症するタイプに関しては、治療のための研究をさらに進める必要があります。
しかし、90歳を越え、認知機能が下がったといっても正常な老化とほとんど変わらない人にも
抗認知症薬が処方されていることには疑問を感じます。
そんな人には経過を注意しつつ、すぐには薬を出しません。
超高齢の方には余計な医療で負担をかけない「脱医療化」も考えるべきです。
(都立松沢病院院長・斎藤正彦先生)
<薬より「伴走」患者ごとに…>
「薬に力で治してほしい」
認知症となった人や家族の多くが抱く願いです。
しかし、今使われている認知症の薬には効果に限界があります。
そんな中、医療に対して何が期待できるのでしょうか。
「周囲に言いたいことが言えず、自分を自分で責めてしまって…」
「心の不調には気候の急な変化も関係します。あなたが悪いわけではありませんよ」
大阪市の認知症専門クリニック・松本診療所の松本一生院長が外来患者にゆったりと話しかけます。
1人につき約15分およそ1ヶ月に1度の面接で松本さんが重視するのは、
認知症によって低下した機能を診つつ、
しっかりと残っているところを見つけて
「あなたの本質は変わってません!」というように伝えることだそうです。
患者の不安に寄り添うのが目的です。
対話を重ねるうち、たとえ時間がかかったとしても
気持ちが徐々に落ち着いていくことが多いそうです。
こうした「精神療法的面接」ができた人では、
「認知機能の低下がしにくい」といいます。
一方でなるべく薬には頼りません。
たとえ治らなくても、本人が病気と向き合えるよう
「伴走」するのが私の役割です、と語っています。
<効果は40人に1人>
いま、認知症の中で最も多いアルツハイマー病の治療に使われる代表的な薬は、
アリセプトなどの「コリンエステラーゼ阻害薬」です。
認知機能が落ちるのを抑える目的の薬ですが、複数の研究を解析した結果では
平均的な効果は「実感できるほどのものではない」ことが示されています。
効くかどうかは個人により差があるものの、
「よく効いたと判断できるのは40人に1人くらい。
ほとんどの人にとっては意味がありません」
と兵庫県立こころの医療センター・小田陽彦センター長はいいます。
アリセプトに続いて登場した3つの抗認知症薬は、
日本の治験で十分な効果が確認されませんでした。
でも「海外では使われ、アリセプトだけでは治療薬の選択肢が限られてしまう」
といった理由で承認された経緯があります。
これら4種類の抗認知症薬は、今年8月にフランスが公的保険の対象から外しました。
副作用がある割に効果が弱いというのがその理由です。
<検査せず、安易な処方>
抗認知症薬を使うなら、対象のアルツハイマー病などであることを見極めるのが前提になります。
ところがそのための事前の検査が十分になされていないという実態も、
今年医療経済研究機構などの調査で明らかとなり、
「薬が安易に処方されているのではないか」という指摘が出ました。
また本来は一緒に使うべきではない同種類の抗認知症薬が、
一部で併用されているケースがあることもわかっています。
医療の多くは、薬や手術を通して患者の病気を「治す」ことを目的にしています。
でも、多くの認知症は今の医療技術では「治癒」させることができません。
英国の施設で長く認知症ケアに携わるある精神科医は、
「認知症は複雑な病気。レシピに沿って『この診断ならこの薬を出せばいい』というわけにはいかない。
本人をよく診て、その人にどんなケアが求められているのか、
個人ごとに見つける必要があると話しています。(編集委員・田村建二)
朝日新聞 2018.12.9. p9. 医療の役割〜認知症、前を向くために〜