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現代漢方を代表する花輪壽彦先生は「患者離れの良い医者こそ良い医師だ」と語っています。
入院治療中などの必要なときには患者さんと密に関わっても、病気が治って退院したら、すっかり忘れ去られるような医師です。
患者さんは完全に治ったので、病院にはもう戻ってこないし、医師の存在さえ忘れてしまう。それが理想的なあり方だという意味です。
患者さんが何百人も門前市をなし、病院の財政にも貢献している医師が良い医師とつい思いがちですが、本当にそうかと再度考えてみる必要があるかもしれません。
花輪先生の言葉には「治ったら患者はいなくなる。本当に良い医者とは、そういうものだ」という医師の仕事としてのとらえ方がよく表れています。
幕末から明治にかけて活躍し、徳川将軍の脈を取った尾台榕堂や、世界に先駆けて大動脈炎症候群の症例を記載した山本鹿洲は、それぞれ『橘黄医談』という同じ表題の本を残しています。
昔から「橘が黄色くなると、医者は暇になる」と言われていて、ビタミンCの多い柑橘類の実が色づいて、皆が食べるようになると、風邪をひく人が少なくなる、ということから、こんな言い習わしがあるようです。
ですから、『橘黄医談』などという題は、今と違って、江戸時代の医者は、忙しさではなく「ヒマさ」を主張することで自らの腕の良さを自慢していたのです。
一方で、いわゆる「名医」にありがちなことですが、通い続ける患者さんに対して多大な影響力を持ち続ける、という状態は健全ではないと思うのです。
それは、患者さんがまるで「信者」ように医師に依存している状態です。
確かに、完全に治せない患者さんはおられますが、そのことに対して、医師が常に忸怩たる思いを抱いているというならともかく、決して自慢にはならないと思います。
患者さんの症状は様々ですし、病気もいろいろです。この病気かと思ったら、時間の経過とともに違う病気だということが判明したり、原因がよくつかめないまま治療しなければならないこともあります。
医師はつねに「わからないものを相手にしている」と言う謙虚さをどこかに残しておくべきではないか、と思います。
何も見えない真っ暗闇の中に一石を投じるような気持ちで、日々治療していく。
体の故障した局所に直接、強力に働きかけて、劇的な効果を狙うような方法を取らず、日々、身体のシステム全体のバランスを淡々と取り戻すような治療です。
このとき、本当に頼りにしているのは、患者さんの自己治癒力で、時間が多少かかっても、骨がくっついたり、腫れが引いたりするはずだと考えます。
「力ずくの医療」ではなく、自己治癒力を引き出すように治療し、全体として良い方向にもっていくわけです。
そのため、この薬を投与したからこうした効果が出るはず、というような予断をもたず、むしろ先を読む部分をあえて放棄している。それでいて何となく患者さんの状態を良い方向にもっていけるのが、本当に腕の良い医師ではないでしょうか。
実は西洋医学でも、これと似たような考え方があります。
半分だけ治す「ハーフコレクト」といういい方をするのですが、例えば、下痢による脱水症状で、体重が3キロ減ったとすると、必要量の3,000mlの点滴をするのではなく、半分の1,500mlだけ点滴をする。あとは状態を見てから補正する、という方法です。
体調が良くなれば自分で飲食をするようになり、それによって回復する可能性もあるので、半分は患者さんの状態に委(ゆだ)ねるわけです。
臨床の現場で、医師はできる限り自分の視野から見えない部分をなくしたい、と努力するものですが、どれだけ小さくなってもそれは残ってしまいます。
ですから最初から見えない部分があることを想定する、全部自分の手の内にあるとは考えない「慎ましさ」というのは、医師にとって大切なことだと思っています。
少しずつ患者さんのセルフケアに返していって、そっと立ち去る。これこそが医療の本来あるべき姿ではないでしょうか。
<インチョーより>
当院でも、皆さまが診てもらいたいときに、すぐに、気軽に、受診できますよう。そして、安心していち早く元の生活に戻れますよう、あまり混まないようにスピーディな体制を心がけております。
ときどき、お待たせすることもあると思いますが、予約なしでも診させて頂きますのでどうぞいらして下さい。
その上で、検査等希望の方は、ご予約頂けましたら幸いです。
いつも大勢の方のご来院に感謝申し上げます。
<参考文献>
津田篤太郎(2014)『病名がつかない「からだの不調」とどうつき合うか』ポプラ新書.